American Space Museum & Walk of Fameを見たあとはCourtyard by Marriott Titusville Kennedy Space Centerにチェックインして、今夜半の打上げにそなえて仮眠した。ここは前週にKSCを訪れた知人から聞いていた「NASA・JAXA関係者いち押しのホテル」だ。なにしろ近い。KSCからインディアン川を渡ってすぐの場所にある。これ以上近いホテルはもう建てられそうにない。ロビーのディスプレイには次の打上げ予定時刻が表示されている。
部屋にはCelestronの双眼鏡が標準装備されていて、NASAの写真集もある。序文を書いたのは米国惑星協会会長のBill Nye。知人からの情報では屋上にも出られるので、たまたまTitusvilleに用事があってたまたまロケットの打上げ時刻に居合わせたという人にとっては、事前準備なしに落ち着いた環境でじっくりと打上げを眺められる最高の場所の一つかもしれない。
あと部屋がなんといっても真新しくて清潔だ。安モーテルに連泊した疲労が嘘のようにほぐれていく。部屋には40インチくらいの巨大ディスプレイがあって、iPhoneやiPadからAirPlayで接続して自分の好きなコンテンツをストリーミングすることもできる。「ITギークのニーズをよくわかっている感」については日本でいえばアパホテルをもっとゆったりと広くしてあの社長の顔とかああいう系の本を無くせばイメージが近いかもしれない。なるほどKSCに仕事で来る人ならここがまずいち押しだ。
あえて難点をいえば徒歩圏内にはコンビニもジャンクフードの店もない。連泊するとシリコンバレーにあるような意識高い系のレストランで毎日同じようなメニューを食べるはめになるのはちょっと食傷するかも。
仮眠してからホテルを出発し、10分ほどで深夜のKSCVCに着いたが、少し渋滞していた。Wave Acrossの時とちがって今夜はKSCVCの正面のゲートから入る。
特設ゲートで持ち物検査と金属探知機のチェックを受けてKSCVCの中へ。
見学場所に向かうバスに乗る前に記念撮影。
発射台39Aから見学場所までは6.3kmほど。シャトルの時もそうだったけど、ロケットはガントリータワーの影に隠れていてここからでは見えない。
見学場所のスタジアムの前には古川さんとロシア人宇宙飛行士コンスタンチン・ボリソフさんの等身大パネルがあって、みんな思い思いに記念撮影している。横には巨大なLEDスクリーンがあってNASA TVのストリーミングを流してくれているが、眩しいので発射の時には消灯される。
午前3時27分(日本時間16時27分)発射。肉眼で発射台を見ながらiPhoneでコンデジのモニタ画面を録画する。NASA TVのストリーミングが20秒近く遅れて聞こえるので、気がついたらロケットに点火されていた。かっこいい。優雅に上がっていく。シャトルのSRBのような眩しさはないが、夜間なのでとても明るくて綺麗。写真ではどうしてもふくれて映るが、肉眼ではくっきりとしたレーザービームのような光点がスルスルとスローモーションのように滑らかに進む。鳥肌が立つ。
SONYコンデジで撮った動画。35mm換算で720mmの望遠。
動画からの切り出し。
シャトルの時はよいしょ、よいっしょ、という感じで上っていくさまがいじらしく見えたが、Falcon9は「今日もお仕事しまっせ」みたいな雰囲気で職人仕事のようにするすると駆け上がっていく。爆音も優しい感じの音がする。「ずいぶん高く上がるな」と首を真上に曲げて光点を追いかける。シャトルの時は仰角45度くらいの感覚だったけれど、Falcon9は仰角60度か、あるいはもっとありそう。そうか、第一段をKSCまで戻そうと思ったら、先に高度を稼いで水平速度成分は小さいほうが帰還に有利なのか?
第一段分離!
天頂付近で妖精が花を咲かせたような淡い光輪が開く。すげー。また鳥肌が立つ。これは夜間の打ち上げでしか見られないね。自分では写真を撮ることを諦めていたので、ミラーレス一眼でずっと追いかけていた知人の写真を許可を得てここでご紹介。
Image Credit: Ryuichi Hasuo
Image Credit: Ryuichi Hasuo
さすがに暗すぎて手ブレしてしまっているけれど、かえってそれがこの幻想的なシーンをうまく再現しているように思える。
[追記 John Winkoppという人がCocoa Beachから撮ったこの時のブースター噴射の写真がAviation Weekの2023年の最優秀賞に選ばれています。幻想的!]
この知人の渾身の一枚がこちら。さすがコンデジとは画質が違う。

Image Credit: Ryuichi Hasuo
さて、第一段の帰還を待つ。Falcon9の一段目がKSCまで戻ってくるのはこれまでにも何度もあったけれど、じつは有人のCrew DragonでKSCに戻すのはこれが初めてになる。案内役のJAXAの人もこの場所で見たことがないのでどこをどう見ていたらいいかの説明ができないようだ。
光輪が咲いた場所と帰還する場所(Landing Zone 1)の場所はだいたいわかっているので、首を大きく曲げて流星群観測の時のように視野全体に注意を向けていたのだが、思いもよらぬタイミングで「パンパン」と衝撃音が聞こえて、すでに着陸してしまっていた。これはどこを見ていればよいのかわからなくて難しい!
ともあれ、よい打上げでした。古川さんのミッションの成功とご無事のご生還を。
シャトルとFalcon9の違い、昼間と夜間の打ち上げの違い、さまざまな感慨に浸りながらバスに乗ってKSCVCの駐車場まで戻ってきた。