「オッペンハイマー」を観たあと遅めの昼食を食べようと中華料理屋を検索して、小さなモールの一角にあるテイクアウトの店に入った。3日前に行ったフランチャイズの店とは違ってこじんまりと独立した店だ。
カリフォルニアロールを頼んでから飲み物はなんにしようかと思っていたらBubble Teaというのがあったので併せて頼んでみた。「炭酸茶?」と思ったら、甘ったるいタピオカドリンクのことだった。寿司にあわせるのはちょっと微妙…
食べ終わって隣のスーパーをぶらついているとメラトニンがあったので時差ぼけ対策に買ってみた。前に飲んでいた時はあまり効いた気がしなかったけれど、なんとかの頭も信心からというしね。Days Innに戻って帰宅のための荷造りを整えていると、ユナイテッド航空からSMSが着信したのでさっそくアプリで翌朝の便をアプリでチェックイン。
「ここに書かれているMCO Reserveってなんだろう?」と思ってリンク先をみてみると、どうやら事前に到着時刻を指定しておくと空港でのチェックインがスムーズになるものらしい。仕組みがよくわからないけれどこのブースを目指せばいいのねと確認して登録しておいた。***
翌朝は2時に起床。昨日のスーパーで買っておいたTVディナーをレンジでチンして食べる。
なんとなく20世紀のNASAから時の流れを加速しつつ21世紀の現代日本まで戻っていく気分になった。帰国したら翌朝から普通に仕事だ。
料金所でクォーターをバスケットにチャリチャリと放り込みつつ、空港から一番近いBP石油のガソリンスタンドに着くとまだ営業してなかった。しかたがないので空港の南にあるSHELLまでドライブ。そういえば初めてアメリカにきた頃は映画の中でしか見たことがなかったセルフ給油のガソリンスタンドに感動したものだっけ。
今回は240マイルほど走って28.7マイル/ガロン。12.2km/ltか。でかい車のわりになかなかよく走るのね。知人には「当日の朝に空港のそばで給油するなんて度胸あるな」と言われた。その人は前日にTitusvilleで給油したけれど満タン返しの扱いだったとのこと。MCOでレンタカーを返却するにはTerminal Aを目指す。立体駐車場に着くと会社ごとにあっちいけとかこっちいけとか分岐があるので、表示を見落とさないように注意深くHertzを目指す。返却レーンの一番前までいって荷物を下ろし、車内に忘れ物がないかを二度ほど確認して係員のチェックを受ける。1分で終了。効率がいい。
しかしiPad miniを固定するために貼り付けておいた強力磁石を回収するのを忘れていたことを飛行機に乗ってから思い出した。しまった冗談で買っておいたこのタグをぶら下げておくべきだったか。戦闘機がスクランブル前にこれを外すのは、ちゃんと意味があることだったのね。MCOのセキュリティチェックは知人たちからの情報どおり早朝なのに長蛇の列だ。うまく事前に登録した時刻にたどり着くことができた。MCO Reserveと書かれた緑色ののぼりがある場所に立っているお姉さんにiPhoneのQRコードを見せるとハンドスキャナーで読み取ってからこっちだ、と案内される。
すげー、並んでないじゃん!とそのまま進もうとすると「待て」と言われた。金属探知機のレーンはMCO ReserveとTSA Standardの待ち行列が櫛状に共有されている。前の乗客が通り過ぎたのを確認して進もうとするとTSAの列から「Excuse me, are you TSA Pre?」と年配の女性から苛立ったような声が聞こえる。あーこれ「てめぇ勝手に割り込んでくるんじゃないわよおまわりさ〜ん!」というイントネーションの「Excuse me」だ。くるりと踵を返して水戸黄門の印籠のようにiPhoneのQRコードをひらひらと見せながら「No, I'm MCO Reserve」と勝ち誇ったような顔で宣言してレーンに進んだ。われながら趣味悪いと思うよほんと。しかしこの特権階級のような待遇にはなかなかお目にかかれないからな。
あまりにもスムーズ過ぎて空港で飲んでから捨てようと思っていたペットボトルの水をセキュリティチェックで捨てるハメになったのと、X線検査のトレイに置いた消毒用エタノールの小分け瓶とマスクをそのまま忘れてきたことをあとになって気がついた。自分でも気がつかないうちに平常心を失っていたらしい。マスクは予備があるからいいけど、これもいい気になっていた天罰だな。かみさますみません私は悪い心をもってしまいました。
MCO ReserveはCLEARという会社がやっている有料のサービスを無料で体験させてくれる仕組みのようだ。一種のお試しコースか。MCOには休暇で来る家族連れも多いだろうから、ここでいい気分を味わうと年間登録料を払ってくれる利用客が増えるという目論見なのかな。
調べてみるとこの種の優先レーンのサービスにはCLEARとTSA Preの二種類があるらしい。
ざっくりまとめるとTSA Preは米運輸保安庁(TSA)が提供する公的サービスでTSA PreCheckが正式名称。TSA Preに申請できるのは米国籍もしくは永住権を持つ市民ということらしい。入国審査の際のGlobal Entryの資格があればTSA Preも自動的についてくるとのこと。ただしそれ以外の乗客に対してTSAの側から勝手にTSA Preを割り当てることもあるようで、その基準はよくわからない。
一方のCLEARは民間が提供するサービスで、各航空会社が年間登録料の割引プランを提供しているようだ。今回はユナイテッド航空がタイアップしてMCO Reserveを薦めてくれたのね。
日本だと公的なサービスと民間のサービスとがそれぞれ別のレーンでサービスを提供するような状況なんてちょっと考えられない。せいぜい毎年入札をやって落札した企業が一年間だけサービスを提供し、次の年は別の企業がまたシステムを構築してまた違うサービスを提供することになる、という、誰も幸せになることのない非効率な状況が容易に想像できる。「平等」ってなんだっけ。
さっきのページにもどると、TSA PreとCLEARは競合するものではなくてお互いに補完的なメリットがあり、両方に登録しておいても問題はないものらしい。例えばTSA Preだと靴を脱ぐ必要がなくて簡易版の金属探知機のゲートを使ってよいとか。意味わからん。
なんでこういう混乱した状況になっているのかをじぶんなりに想像してみると、おそらく9.11以降、アメリカの空港ではセキュリティチェックや入国審査が厳しくなっていて、行列の待ち時間が長くなるいっぽうなので、リスクが低いと判断できる乗客をあらかじめ事前にデータベースでチェックして検査や審査を簡素化することによって空港機能の破綻を防ごうとしてあがいているのだと考えられる。
つまりTSA PreもCLEARも、それぞれの組織が蓄積している乗客一人一人のデータをある基準でスクリーニングして、危険度や不審度が高い乗客を事前に見分けておくためのサービスなのではないか。知らんけど。
じぶんの場合はこれまで20回くらいは日本とアメリカを行き来していて、そのほぼ全てでユナイテッド航空を使ってきたので、航空会社に蓄積されているじぶんの信用情報がかなり高いレベルに達しているのではないかと思われる。CLEARはユナイテッド航空と秘密保持契約を結んだうえでその情報にアクセスしているのではないか。
いっぽうTSAは公的機関なので、出入国の情報は独自に管理しているし、最近では電子パスポートにかなり詳細な情報が記録されるようになっているらしい。じぶんの米国出入国記録についてはこちらのサイトの"View Travel History"から自分のパスポート番号を入れるとチェックできるよ、とあとで知人から聞いた。
と考えてみると、公的なサービスと民間のサービスが併立している理由をなんとなく納得できる気がする。知らんけど。
知人の中には今回搭乗券に「SSSS」と印刷された人がいて、なんだそれはと思ったら、Secondary Security Screening Selectionというものらしい。つまり「要注意人物」というフラグで、入国審査で別室に連れていかれて徹底的な尋問?を受けるのだとか。そんなものがあることすら知らなかったじぶんはやはり恵まれた星のもとに生まれたのか?
余談になるが、成田で税関を通過する時に係官はよく、じぶんの顔を見るなり無言であごをしゃくって「行け」のジェスチャーをする。パスポートを数ページぱらぱらと目を通したふりをする。顔パスかよおれの顔ってそんなに覚えやすいん?
冗談はさておき、日本の場合は係官の職業的な勘が水際対策の重要な要素になっているのだろう。乗客が荷物をターンテーブルから拾い上げて税関に近づくまでのふるまいやちょっとした質問への反応などから不審度を判断しているようにみえる。
スイスとフランスの国境を通過する時も係官は目の前の車の運転手とやりとりしてる間に次の車の運転手の目をちらちらとみている。検問所に近づくときに車がちょっとふらついたりすると、かなり徹底的に調べられる。スイス人は勤勉に平均的にチェックする。フランス人は同僚とくっちゃべっていてサボっているように見えるがここぞというときには徹底的にチェックする。
日本がいいとかアメリカがいいとかという問題ではなくて、これはやっぱりお国柄なのだなぁと感じる。
MCOのセキュリティを3分で通過してフードコートで軽く食事したあと、Gate Linkで出発ゲートに向かった。